キャリア

年収500万円以上は払い損になる?雇用保険の負担と給付を調べてみた。

先日、会社を辞めたのでハローワークに行ってきた。

もう何度目かは忘れたが、いつも思うことがある。

暗い、暗すぎる。

なぜこんなにも活気がないのか不思議でならない。

おそらく病人で溢れる病院の待合所のほうが、ずっと賑やかではないだろうか。

ポップな音楽でも流せばだいぶ雰囲気も良くなりそうだが、いかがだろうか?

ぜひともご意見をうかがいたい。

 

さて職安の空気はともかく、失業手当の手続きをして気になることがある。

不公平だ。

日本には厚生年金保険・健康保険・介護保険…と過保護なくらい強制保険がいくつも用意されている。

もちろん公的保険は助け合いの精神で設計されているため、低所得者ほど手厚い。

わかっている。

が、あえて言わせていただく。

やはりお前もか、雇用保険。。。!

 

調べてみたところ、ある一定の収入を超えると掛け金と給付のバランスが崩れてしまうことがわかった。

強制加入ゆえに知ったところでどうすることもできないが、興味のある方は読み進めていただきたい。

 

雇用保険、毎月いくら支払っていますか?

ところでみなさんは毎月給与から天引きされる雇用保険がどのように計算されているかご存知だろうか?

厚生年金や健康保険料に比べるとウンと少ない額なので、あまり気にする人もいないかもしれない。

ただ私は給与明細の細かいところまで気になるタイプの人間だ。

毎月バラバラの金額が徴収される雇用保険料の仕組みが気になってしかたない。

そこで調べてみると、奇妙なルールがあった。

 

徴収額は年収ではなく月収ベース

雇用保険は少し変わっている。

社会保険料が基本的に毎月一定の金額が給与から天引きされるのはご存知だろう。

年金・介護・健康保険料は標準報酬月額(4~6月給与の平均値)という等級ごとに区分し、1年間は決まった金額が控除される。

給与に大きな変動がない限り、固定である。

少しでも保険料を抑えるために、「3~5月はなるべく残業しないように!」なんてアドバイスもある。

なかなか大雑把な仕組みである。

 

一方、雇用保険はというと、毎月の収入ごとに1円単位まで細かく算出される。

計算式はいたってシンプルだ。

【2019年度の雇用保険料率】

・一般業種・・・支給総額×3/1,000(事業主からも6/1,000拠出)

・農林水産、酒造業種・・・支給総額×4/1,000(事業主からも7/1,000拠出)

・建設業種・・・支給総額×4/1,000(事業主からも8/1,000拠出)

仮に給与の額面金額が30万円とするなら、

30万円×3/1,000=900円が雇用保険料として控除される仕組みだ。

 

ここで雇用保険料の計算に含まれる賃金を確認しておこう。

【賃金に含まれるもの】

・基本賃金

・残業手当

・賞与

・通勤手当(回数券など現物支給も含む)

・役職手当

・技能手当(資格手当/能力給など)

・家族手当(扶養手当など)

・奨励手当(インセンティブ/皆勤手当など)

・地域手当

・住宅手当

※参考:厚生労働省、労働保険について

 

【賃金に含まれないもの】

・役員報酬

・慶弔見舞金(結婚祝金/災害見舞金/死亡慶弔金など)

・退職手当

・出張旅費(宿泊・交通費など実費弁済したもの)

・解雇予告手当

一言でいえば給与明細の総支給にあたる賃金は全て算定の対象になる点で、課税・非課税は関係ない。

もちろん通勤手当も含まれる。

未だかつて出会ったことはないが、新幹線通勤であれば影響は大きいはずだ。

通勤手当まで計算に入れられるのはどうにも腑に落ちないが、定期券をクレジットカードで購入している立場としては、不満を言うのもやや気が引ける。

ポイント還元率>保険料率であるから、ここは目をつぶることにする。

賞与からも控除されることは忘れずに!

 

たかが1,000円と甘く見てはいけない。

前述の通り、毎月支払う雇用保険料は給与全体からするとわずかな数字だ。

目先の生活に困ることもないだろう。

ただ、強制加入の保険である。

あなたがサラリーマンである限り、この先ずっと逃れることはできない。

たかが月1,000円であっても30年、40年と払い続ければ大きな支出だ。

毎日の缶コーヒーだって1年も続ければ3kgの体脂肪の元である(諸説あり)。

 

参考までに会社員が生涯で支払う雇用保険料を年収別に算出してみた。

【年収別】雇用保険料の負担額 (労働者負担が3/1,000で推移した場合)
年収 年間負担額 40年間負担額
200万円 6,000円 240,000円
300万円 9,000円 360,000円
400万円 12,000円 480,000円
500万円 15,000円 600,000円
600万円 18,000円 720,000円
700万円 21,000円 840,000円
800万円 24,000円 960,000円
900万円 27,000円 1,080,000円
1,000万円 30,000円 1,200,000円

40年間、収入が同じなんてことはまずないが、大雑把に表すとこんなものだ。

日本の会社員全体の平均年収が420万円といわれているので、生涯負担は50万円ほどと推測する。

では年収420万円の会社員が失業した場合、いったいいくらの失業給付を受けられるのだろうか?

 

雇用保険で元が取れるのはどんな人か?

よく若い世代の公的年金は払い損だという話になる。

ところが雇用保険に関しては、議論として大きく取り上げられることがほぼない。

世代間格差も少なければ、自分は払わないなんて選択が不可能であるのも理由の1つであろうが、被保険者であるなら1度は考えてみてはどうだろうか?

 

失業給付の対象となるもの、ならないもの

失業手当の計算をする際、基準となるのは離職前6ヶ月間の収入だ。

ただし全ての収入が計算に含まれるのではなく、保険料支払い時のルールとも異なる。

簡単にまとめておこう。

【失業手当の計算に含まれるもの】

・基本賃金

・残業手当

・通勤手当

・役職手当

・技能手当(資格手当/能力給など)

・家族手当(扶養手当など)

・奨励手当(インセンティブ/皆勤手当など)

・地域手当

・住宅手当

【失業手当の計算に含まれないもの】

・賞与(支給回数が年3回以下の場合)

・役員報酬

・慶弔見舞金(結婚祝い金/災害見舞金/死亡慶弔金など)

・退職手当

・出張旅費(宿泊代など実費弁済したもの)

・解雇予告手当

 

給与明細の総支給にあたる部分はほとんど対象だと考えて問題ない。

上記に当てはまる収入を基準に以下のような計算で1日あたりの給付額を決定する。

基本手当日額=(離職前6ヶ月間の賃金総額/180)×80%~45%

※ただし年齢による上限あり。

つまり1日当たりの平均賃金を算出し、賃金に応じた給付率を掛けるわけだ。

給付率は賃金が低いほど高く設定されているため、低所得者ほど優遇される形だ。

※賞与については年間の支給回数が少ない(3回以下)と算定されない。

これは退職時期による不公平感を解消するためだ。

例えば7月/12月の年2回支給がある会社の場合、

●12月31日退職・・・賞与2回分が対象(7~12月の総収入で判定)

●1月31日退職・・・賞与1回分が対象(8~翌1月の総収入で判定)

●6月30日退職・・・対象の賞与なし(1~6月の総収入で判定)

と同じ収入の人でも退職時期によって、基本手当に大きな差が出る可能性がある。

雇用保険の公平性の観点からは好ましくないため、対象から外すことになったそうだ。

どうせなら賞与から保険料を徴収するのもやめていただきたい。

 

果たして十分な額が給付されるのか?

それでは実際のところ、支払った保険料に対し、失業時にどれくらいの給付が見込めるのだろうか?

会社員の平均値である年収420万円を例に考えてみたい。

まず算出にあたって基本日額を求めるわけだが、賞与が含まれないことは前述の通りだ。

ここでは仮に賞与額は2ヶ月分にあたる60万円としておこう。

したがって月収は30万円として試算してみる。

☆6ヶ月間の総収入…30万円×6ヶ月=180万円

・賃金日額…180万円/180日=1万円

また賃金日額(w)が1万円の場合、基本手当日額(y)は

y=0.8w-0.3{(w-4,970)/7,240}wの公式に当てはめて求めることができる。

計算過程は省略するが、基本手当日額は5,916円となる。

1日分の手当がわかったところで、次は給付日数を求めてみたい。

保険期間 所定給付日数 給付総額
10年未満 90日 532,440円
10年以上~20年未満 120日 709,920円
20年以上 150日 887,400円

失業手当は28日単位で振り込まれるので、1ヶ月の生活費として受け取れるのは約16万5千円だ。

独身なら最低限やっていけるだろう。

 

ちなみに年収420万円の会社員が今の条件で、40年間に支払う雇用保険料は50万4千円である。

上の表からもわかるように、人生で1度でも受給資格が得られればプラス収支となる可能性が高い。

月々1,000円ほどで加入できる保険としては悪くなさそうだ。

 

年収次第では損する人もいる。

先ほどは平均的な年収モデルで計算してみたところ、保険料に見合った保障が期待できることがわかった。

しかし、必ずしも全所得層で同様に歓迎できる制度でないこともお伝えしておきたい。

なぜなら雇用保険の給付には年齢ごとに一定の上限が設けられているからだ。

保険料の徴収は青天井にもかかわらず、対する給付額に上限があれば、必ずどこかのラインで損する層が出るはずだ。

ここからは雇用保険の損益分岐点を探ってみたい。

 

給付上限にあたる年齢は次の4つの区分に分かれている。

離職時の年齢 平均日額賃金 基本手当日額(上限) 年収換算
30歳未満or65歳以上 13,500円超 6,750円 約567万円
30歳以上45歳未満 14,990円超 7,495円 約630万円
45歳以上60歳未満 16,500円超 8,250円 約693万円
60歳以上65歳未満 15,740円超 7,083円 約661万円

賞与は2ヶ月分として計算しているので個人差はあるが、若年層では年収500万円台後半から、最も中堅~ベテラン社員層でも年収700万円の手前で上限に達してしまう。

上記の年収以上稼いでいる人は超えた分だけ保険料はもれなく徴収されるが、失業時の給付額は上がらない。

例として30歳以上45歳未満、保険期間10年未満のケースで詳しく見ていこう。

年収 平均賃金日額 基本手当の日額給付金額 給付日数(90日)×日額 支払い保険料総額(40年間)
300万円 約7,130円 約5,066円 約455,940円 360,000円
400万円 約9,500円 約5,817円 約523,530円 480,000円
500万円 約11,900円 約6,103円 約549,270円 600,000円
600万円 約14,270円 約7,135円 約642,150円 720,000円
700万円 約16,660円 7,495円(上限) 674,550円 840,000円
800万円 約19,030円 7,495円(上限) 674,550円 960,000円
900万円 約21,400円 7,495円(上限) 674,550円 1,080,000円
1,000万円 約23,800円 7,495円(上限) 674,550円 1,200,000円

年収500万円を超えた辺りから給付金額は雇用時の半分(以下)になり、生活水準は体感的にかなり下がる。

失業手当などに頼らず、さっさと就職したほうがマシだと思うほどだ。

むしろ1日でも早く働かなければ、生活が成り立たない。

また40年間働いた場合、手当を満額受け取ったとしても、生涯で支払う保険金額が上回るためマイナス収支だ。

仮に離職時に10年以上の保険加入実績があれば給付日数は120日に増えるワケだが、それでも年収800万円以上の人は払い損となる。

 

ここまでを年齢別でまとめると、次の年収がおよその損益分岐点となりそうだ。

【30歳未満】

・年収450万円(保険期間10年未満)

・年収680万円(保険期間10~20年未満)

【30歳以上45歳未満】

・年収450万円(保険期間10年未満)

・年収750万円(保険期間10~20年未満)

・年収940万円(保険期間20年以上)

【45歳以上60歳未満】

・年収450万円(保険期間10年未満)

・年収830万円(保険期間10~20年未満)

・年収1,030万円(保険期間20年以上)

【60歳以上65歳未満】

・年収450万円(保険期間10年未満)

・年収710万円(保険期間10~20年未満)

・年収880万円(保険期間20年以上)

トータルで考えるなら年収1,000万円超の高所得者でも、保険料の元を取ることは不可能ではない。

ただ実現するには月収70万円以上の生活水準から、一気に月収23万円ほどの生活に切り替え、5カ月以上続ける必要がある。

おそらく耐えられない。

なぜなら住民税だけでも毎月5万円以上かかり、その他社会保険料などを納めれば、実質手元に残るのはわずか15万円ほどしかないからだ。

 

あくまでセーフティネットであり、公平性のかけらもない。

過去に3度受給した人間として、もちろん感謝はしている。

ありがたい。

結論:雇用保険、得するのはこんな人

雇用保険制度の給付率は収入によって大きな差があることはおわかりいただけたと思う。

もちろん受給機会があることが前提だが、具体的には次のような人は制度の恩恵を受けやすい。

・日本の平均年収をひた走る人(年収400万円以下)

→収入が低い人ほど給付率・還元率は高い。

・何度も転職を繰り返す人

→保険加入期間が1年以上あれば、何度でも受給できる。人生の夏休みを何度でも!ただし老後までの人生設計は計画的に。

・自営業者へ転向する人

→雇用されていなければ被保険者でなくなる。正にもらい逃げ。逆に人を雇えば事業主として拠出する側になるので注意。

・教育訓練給付を積極的に利用する人

→資格取得・訓練費用などの実費が20%給付される(諸条件あり)。3年に1度利用が可能。もはやどこが保険なのか理解に苦しむ。

 

雇用保険制度は難しい。

私より何倍も頭のいい人達が設計したのだから、当たり前だ。

結局トータルで多少払い損になろうとも、本当に苦しい時の経済的サポートには代えがたいと感じる。

公的保険全般にいえることだが、働ける時に最大限稼ぐことは、保険料を多く支払うことがあっても後悔する人生にはならないはずだ。

保険に頼らなくていい人生が何より幸せである。