この会社ではもうやっていけない。
ふとしたことがきっかけである日突然、仕事辞めたい願望が沸き上がることがある。
たいていは一晩冷静に考えれば思いとどまるが、積もり積もって限界点を超えると抑えがきかなくなる。
断っておくが決して暴れ出すタイプの人間ではない。
何事もなかったかのように普段通り出社し、水面下で準備を始める。
絶対に悟られてはいけないし、相談もしない。
機が熟すまではひたすら我慢の日々である。
もう一つ断っておくと、別にサプライズがしたいわけではない。
ただ感情に任せて動くのではなく、好条件で退職するためには必要な準備やタイミングがある。
自ら職を手放した人間に対し、公的な支援はあまり望めない。
職業安定所の失業手当はその代表例で、3ヶ月も無収入の状態で転職活動を続けることは不安と焦りしか生まない。
次の職場でも上手くいかないことは目に見えている。
ただ諦めるのは少し待ってほしい。
実は自己都合退職の場合でも、有利な条件で失業手当を受け取る方法はある。
じっくりと腰を据えて転職活動をしたい人はぜひ参考にしてほしい。
Contents
早くもらえるだけじゃない、受給額アップの可能性も!
これまで6度の転職活動をしてきたが、退職して開放的な気分でいられるのは長くても1ヶ月程度である。
やはり先の見えない無職の期間ほど不安なことはない。
兵糧攻めではないが、自己資金が減ってくるのは心もとないし、次第に妥協して早く働ける仕事に職探しの軸がシフトする。
落ち着いて納得のいくまで転職活動を続けるには、経済的なサポートが欠かせない。
早期に失業手当が受け取れるだけで、精神的なゆとりは全然違う。
さらに言えば早期受給の権利を勝ち取れば、同時に手当の総額も大きくアップする可能性がある。
退職理由でこんなに違う、自己都合と会社都合
そもそも退職理由が会社都合になるとどんなメリットがあるのだろうか?
まずは表で比較してみたい。
☆失業手当の給付日数(自己都合退職の場合)
保険期間 | 10年未満 | 10年~20年未満 | 20年~ |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
☆失業手当の給付日数(会社都合、一定要件を満たす場合)
保険期間 | 6ヶ月~1年未満 | 1年~5年未満 | 5年~10年未満 | 10年~20年未満 | 20年~ |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳~35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳~45歳未満 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳~60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳~65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
違いは一目瞭然だが、ポイントは大きく分けて3つ。
・6ヶ月以上の加入期間があれば、給付資格が得られる。
・離職時の年齢によって支給日数が増える。
・勤続年数による給付日数の追加条件が緩和される。
例えば勤続年数3年・月収30万円の30歳会社員が退職した場合の日額は約6,000円。
自己都合だと給付額は最大54万円、もちろん給付開始は3ヶ月後だ。
一方、会社都合になれば給付額は最大72万円と保障は手厚くなる。
この違いは非常に大きい。
失業手当を早くもらうための条件とは?
失業手当は好条件で受け取りたい。
だが問題は「解雇される以外にそんなに都合のいい方法があるのか」という疑問だ。
結論から言えば答えは可能である。
優遇を受けるための条件が特定理由離職者と特定受給資格者である。
前置きが長くて申し訳ない。
本記事の本題にようやく入れそうだ。
次項で詳しく見ていこう。
特定理由離職者に該当するのはどんなケース?
解雇されたわけではないが事情があって退職する場合、特定理由離職者の認定を受けることが可能だ。
具体的に次のようなケースなら会社都合退職と同等の扱いで失業手当の受給が認められている。
・有期契約社員が契約期間満了後、希望に反して更新してもらえなかった。
・体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力・聴力・触覚の減退で退職した。
・妊娠、出産、育児などで離職し、失業手当の受給期間延長措置を受けた者。
・父母の死亡や疾病・負傷による介護など家庭事情が急変したために退職した。
・配偶者または扶養すべき親族と別居生活が困難になったため退職した。
・通勤が困難になり退職した。(配偶者の転勤、公共交通機関の廃止など)
主に病気や怪我などで働けなくなった場合、物理的に通勤が困難になった場合などが対象となる。
ただし特定理由離職者と認定されても、そもそもすぐに働ける状態でなければ手当は支給されない。(転職活動を行う必要がある)
当面の間、休養が必要な時は受給期間延長の申請をするなどハローワークに相談するのがベター。
特定受給資格者に該当するのはどんなケース?
やむを得ない事情とまではいかないが、雇用環境に問題があるために退職した場合、特定受給資格者に該当するケースがある。
このケースでも会社都合と同等の優遇があるため、条件はぜひ押さえておきたい。
・労働契約時に明示された条件が実際と著しく違った。
・賃金の遅配があった(3分の1以上の額が遅れた場合)。
・賃金が支払われていた額の85%未満に低下した(労働者が予見できなかった)。
・離職直前6ヶ月の時間外労働が以下のいずれかを超えた。
(①3ヶ月連続で45時間、②連続2ヶ月の平均が80時間、③1ヶ月で100時間)
・上司や同僚からの嫌がらせが原因で退職した(セクハラ・パワハラなど)。
・事業所の業務が法令に違反した(行政処分を受けた)。
・3年以上雇用されていた有期雇用契約者が更新を拒否された。
・事業主が法令に違反し妊娠中・養育中・介護を行う者に不利益な扱いをした。
・社員の職種変更に際して、会社が必要な配慮を行わなかった。
会社が法令違反をしたケースや、不当な扱いによって退職を余儀なくされたケースなどが特定受給資格者に該当する。
中でも過重労働などは該当する人も多いのではないだろうか。
サービス残業を強いられているなら、メモでもいいので実労働時間を控えておくことをおすすめする。
より詳しく知りたい人はハローワークの公式サイトも確認してほしい。
会社と揉める必要はない
いくらメリットがあったとしても、会社と揉めてまでやりたくないという人もいるだろう。
どんなに上司が気に食わなくても、会社に不満があろうとも辞める時は円満にいきたい。
だけど「全て会社規定に従います」では自分の権利を主張することができない。
退職理由の決定は難しいところである。
ではどうすれば会社と揉めることなく、特定受給資格者の認定を受けられるのだろうか?
退職理由を変更しよう。
退職届を書く際に、「〇〇部長のパワハラがひどいので」や「残業時間が多いので」とありのまま書く人はおそらくいない。
「一身上の都合により…」で済ませるのがほとんどだろう。
もちろんその場合、離職票は自己都合退職として処理される。
慌てる必要はない。
ハローワークに行けば、離職理由は後からでも変更可能だ。
窓口の給付担当者に離職理由を相談してみよう。
特定理由離職者もしくは特定受給資格者、いずれかの該当する事項を申告すれば離職理由の異議申し立てができる。
ハローワークの職員があなたに代わって会社に掛け合ってくれるので、自分が嫌な思いをすることはない。
申請を希望する際は離職票と併せて客観的な証拠となるものがあれば用意しておこう。
例えば、
・時間外労働が多かった・・・タイムカードのコピー
・給与支払いが遅れた・・・給与振り込み口座のコピー
・会社に法令違反があった・・・担当省庁HPのリリース記事など
私自身も先日、過去6ヶ月分のタイムカードを提出したところ、その場であっさりと特定資格受給者として手続きを進めることができた。
残念ながらこの労働者の救済措置ともいえる特別資格について、ハローワーク側から制度を教えてくれることはほとんどない。
利用するには自分で調べてどのケースに該当するのか申告する必要があるのは、何度行っても不親切だと感じる。
居酒屋の裏メニューでもあるまいし、もう少し親身な対応を希望したいかぎりである。
おまけ:退職前はなるべく残業しておくとお得!
最後に退職を考えている人に1つだけお伝えしたい。
退職前は可能なかぎり残業をしておくと離職後に有利な場合が多い。
引継ぎなど業務量は増えるので必然的に忙しくなるが、単に残業代が増えるだけでなく
・残業過多により、特定受給資格者に認定される場合がある。
・退職前の給与が増えれば、失業手当の支給額も上がることがある。
などメリットがある。
失業手当は離職前6ヶ月間の平均収入を基準に支給額を算定するので、残業代が増えれば失業中にもらえる手当は(上限を超えない範囲で)増える。
すぐに失業手当を受給するための条件がそろっているならぜひとも参考にして実践してみてはいかがだろうか。